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娯楽性と色変化の関係




007 黄金銃を持つ男 アルティメット・エディション

007 黄金銃を持つ男 アルティメット・エディション

  • 出版社/メーカー: 20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン
  • 発売日: 2006/11/22
  • メディア: DVD




僕が生まれて初めて「娯楽」という言葉を聞いたのは、水野晴郎による007の解説でした。




 「これぞ娯楽映画の金字塔」




確か、そんな台詞でした。

小学校の、たぶん3,4年生かなんかで、僕は映画館が出来ては潰れるという越後の片田舎の看板を見て、かっこいいスーツに身を包んだ二枚目スパイと、絵に描いたような絶世の美女のポスターを見て、子供心にワクワクドキドキしていたものでした。




まあちょっとその当時の僕には007は大人向け過ぎましたが、007によるエンターテインメントの原体験はスターウォーズのそれよりもずっと色濃く僕の脳に残っていたのでした。




007はいつ、どの作品を見ても、それなりに楽しめます。




これは凄いことで、007を演じている俳優も、監督も、脚本も毎回異なります。同じなのは「英国秘密情報部MI-6のエリート諜報員、ジェームズ・ボンドこと007(ダブルオーセブン)が悪の組織の陰謀を打ち砕く」というプロットだけ。




それでこれだけ毎回引っ張ってくれるのは凄い。




ある意味で、「毎回シチュエーションが違って、守るのは少数のお約束のみ」という意味でゲーム業界の007とも言えるのがファイナルファンタジーシリーズですが、007はそのフォーマットをもう少し厳密に持っているわけです。




007シリーズの魅力はとても一言では語り尽くせませんが、共通する魅力として




・男らしく賢く、逞しい主人公:ジェームズ・ボンド

・妖艶でセクシーなヒロイン:ボンドガール

・世界を股に掛けた多彩な舞台展開

・アッと驚くスパイグッズ




にあると言えるでしょう。

セックスシンボルであるボンドとボンドガール、めまぐるしく変わる派手な舞台展開と、意外な働きをみせるスパイグッズ。こういうギミックの集大成が007シリーズをいつまでも色あせない魅力的なシリーズに仕立てているのですね。




なんで新年早々007の話なのかと言いますと、まあ少し深い理由があるのです。




例年、年越しはいろいろとトラブルが起きることが予想されるのでずっと会社に詰めるのがここ10年くらいの習慣になっていたのですが、今年はびっくりすることにほとんどトラブルが起きることもなく新年を迎えることが出来たので、元日のんびり過ごしていたら、あまりにも暇で、近所のツタヤに出かけると、007シリーズのDVDが大量に安売りされていたので思わず買ってきた、というわけです。




あまり深くありませんでしたね。




子どもの頃は、僕は将来、絶対ボンドガールみたいな女の人に沢山騙されるんだ!と思って生きてきたのですが、齢30を数えてもいっこうにそういう罠がやってきません。英国人じゃないせいでしょうか。なんにせよ残念なことです。




007を大人になってから見ると、わりとありきたりな話の展開に驚きます。まあ古い映画なので、そのあたりは仕方がないんだと思いますが、それでもスピード感を感じるのは、とにかく場面転換が多いこと。他の映画と比べると解りますが、とにかくボンド映画は場面転換が多い。移動距離とかもとんでもないことになっています。




あるシーンで雪山にいたかと思えば、次のシーンでは砂浜で水着を着ていたり、ムーディーなシーンが始まったかと思えば爆発で目を覚ましたり、とにかく数分に一回は大胆な場面転換があってスピード感で物語を引っ張っていくわけです。




これは言うのは簡単ですが、この展開に意味や必然性を持たせるのはかなり大変です。

24では複数の話が並行して進むことで擬似的にこの激しい場面転換によるスピード感の演出に成功していますが、007は単一のシークエンスでこれだけの場面転換を行っているわけですから、話が多少なりとも強引に展開するのは目をつむれる部分でしょう。




雪山のシーンのあとに砂浜のシーンが来るような展開が素晴らしいのは、画面の色が鮮やかに変化することです。




白から青へ、そしてローマの美しい石造りの建造物へ・・・などなど、カラフルに場面が転換していきます。




たいていの映画はどのシーンで見ても同じような色合いのシーンが多くて、飽きてしまいます。




スターウォーズと007に共通するのは、場面転換における色変化の鮮やかさです。

特にエピソード2ではその演出が顕著です。




もちろんこうした派手な場面転換がなくてもいい映画は沢山あります。

けれども、何も考えずに見てワクワクドキドキ、スカッとする、要するに「娯楽」という要素のエッセンスは、こうした画面全体の色調変化にあるのではないかと思うのです。




僕はマトリックスもかなり好きなのですが、あんまり繰り返し見たいと思いません。

007は3作連続して見ても楽しめます。




話が繋がってないというのも重要かもしれませんけどね。




似た手法を使った映画に、「チャーリーのチョコレート工場」があります。これも名作です。けれども「娯楽」という要素よりも少し文芸寄りかもしれません。




「ハリー・ポッター」も暗いシーンが多いのですが、場面転換のスピードやバリエーションはかなり豊富な方です。




そのかわり、マトリックスのような単調な色の映画には、独特の世界観を感じられます。

その世界観が好きな人は、映画が終わった後もずっとその映画の印象を強く胸に抱き続けるのです。




その映画を繰り返し見ることは無くても、ずっと心に印象深く残るのはそういう作品だったりするのです。DVDを買っても繰り返し見たいとは思わないけど、本棚に入れておきたい作品はこういう作品なのかもしれません。




こういう話はゲーム制作の時には良く論じるのですが、Webサービスを作る際にも適用できるかもしれませんね。


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