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Web価格早見表を見て就活とグッチを思い出す


「業種が絞れない? だったら給料の高い業種を選びなさい」




そんな衝撃的なことを言うのはもちろん僕ではありません。ニューヨークの草刈機と怖れられたヘッドハンターの白川義彦です。




残念ながらこの人は実在しないんですけど。




就職活動漫画「銀のアンカー」に出てくるメンター役の人です。






銀のアンカー 1 (1) (ジャンプコミックスデラックス)

銀のアンカー 1 (1) (ジャンプコミックスデラックス)

  • 作者: 三田 紀房, 関 達也
  • 出版社/メーカー: 集英社
  • 発売日: 2007/03/23
  • メディア: コミック





三田紀房氏の漫画はどれも激しくて大好きです。ある意味、ビジネス版カイジというか。




この漫画は就職活動に悩む学生をなぜか超一流のヘッドハンターである白川義彦が指南し、学生達が自分探しに決着をつけていくという話です。




 「営業が出来ませんなんて言う奴は就職するな!」




 「迷ったら給料の高い会社へ行け」




 「世の中カネだ」




学生が読むには刺激的すぎる内容ですが、これを読んでいて、最近はてブで話題の○○円ならどこまでできる!? ウェブサイト制作の相場早見表を思い出したわけです。




まず一巻の終盤で主人公は




 「給料で決めろと言われたって、人生にはやりがいとか、充実感とか、もっと大切にしたいことはある」




と悩むわけですが、ふと立ち寄ったコンビニで、168円の値札をついたお菓子を手に考え込みます。




 「これを168円で売るとどれだけ利益が出るんだろう」




するとコンビニの商品の陳列棚が戦国時代さながらの戦場に見えてきて、なぜ業種によって生涯賃金に5億円もの開きがあるのか、ということを想像してみるようになります。




要するに、儲かる業種、競争の少ない既得権益の業種、国策企業が圧倒的に安定していて、故に給料が高いのではないかと主人公は思うわけです。




そんなことを頭に置きながら、このWeb制作単価早見表を見たら、「この業界、やばいんじゃないの」と思いました。




でももっと驚いたのは、この早見表に対するはてブのコメントです。




 「高すぎる!」




逆に僕は「こんなに安かったら大変だな」と思いました。




他の記事によると、web屋の相場が公開。高いとか安いとか、全く議論ならない本当の理由(どうでもいいtypoだけど、"web屋のネタ帳"がCMSをCSMと誤記するのはいかがなものか)を見ると、20万円くらいのサイトが相場らしく、お客様によっては5万~10万円でWebページを作れると思っているのだとか。




このレベルになると、もうパンフレットとか、名刺とか、そういうものと変わらないですね。




これとは全く関係なしに、クルマでの移動中で良く若い社員と話しをするのですが、




 「僕たちが10年、20年と会社を続けていくためにはどうすればいいか」




というテーマについて話をしていたときに




 「結局のところ、お客様のお役に立つ仕事、お役に立つ方法を考えていくしかない」




という結論に至るわけです。




 「世の中には、人の役に立たずに儲かる仕事はひとつもない。B2Bに限定すれば、お客様を儲けさせて自分も儲ける商売以外は成功しない。会社はツールに徹するべきだ。

 GoogleもYahooも電通もテレビ局も、広告というツールを提供する会社だし、楽天はEコマースというツールを提供する会社。ハワード・ヒューズの両親が一代で莫大な富を築いたのも、ヒューズ・ツールズ社という、採掘用機械の会社だった。




 ソフト業界でマイクロソフトは何故儲かるのか。世界で最も汎用的なツールを販売しているからだ。

 映画制作の会社、例えばスピルバーグのユニバーサル映画だって、"映画"というコンテンツを創り出して、それを上映すると映画館が儲かる、という意味では映画館が儲けるためのツールを提供しているのだ。

 ゲーム会社だって、ゲームソフトを開発することで、流通が儲かり、ゲームショップが儲かるし、ゲームセンターが儲かる。




 我々のモバイルCMSをお客様に買っていただけるのは、そうすることで儲かるからだ。

 Eコマースサイトの経営で月に100万円の利益を出すのは並大抵のことではないけれど、モバイル公式サイトなら簡単だからだ。




 そして、お客様が儲かっている限り、我々は存在を赦されるのだ。お客様がさらに儲かるように、僕らは日夜工夫して努力しなければいけない」




モバイルの公式サイトを20万円で受注する会社はたぶん存在しません。

なぜならHTMLを書いて終わり、ということには永久にならないからです。




キャリアとの折衝や、極めて厳しい審査、日々変化する課金システムや端末の仕様の変動。

こうしたものに柔軟に対応していくためには、「キャリアの空気を読む」能力が不可欠で、これは長い時間をかけて培った経験と人間関係、要するに信頼と実績でしか生まれません。




そうした会社、実績のある会社に頼むと、正直高いです。20万円どころか200万円でも門前払いでしょう。




しかし、結局のところ儲けの近道となって、そういう会社に注文が殺到するのです。

だから他の業者がどんなに安い価格を提示しても、その何倍もの価格を提示する経験豊富な会社が受注を勝ち取っていくわけです。




それは要するに、ある種の既得権益です。




PCのサイトの多くが、どちらかというと看板やパンフレットの役目か果たさないのに対し、モバイル公式サイトは直接エンドユーザから情報料を頂いて儲けを出すことが出来る。この違いは大きいです。




前者は単なる広告宣伝費ですから、体力のない会社、要するに日本の企業の90%くらいの会社は広告宣伝に掛ける予算なんか取ってないか、あっても最低限に抑えたいと思っているはずです。だからせいぜい20万円くらいなのかもしれません。




後者は収益を産む新規事業ですから、そこに使うのは広告宣伝費ではなく事業投資です。

事業投資で初期費用をケチって失敗するくらいなら、沢山の賭け金を積む、というのはごく自然な発想と言えます。




モバイル公式サイトの年間予算はPCサイトの少なくとも10倍、それでも収益を産むのだから、収益に繋がっているかどうかがわかりにくいPCサイトよりもずっとお金は払いやすいということになります。PCサイトの場合、お金は出ていくだけですが、モバイルサイトの場合、悪くても収支トントン、良ければお金が増え続けるわけです。




これが僕がモバイルに拘っている理由でもあります。




モバイルは地味だからみんなあまりやりたがらない。

Web2.0とか、CSSとか、カッコイイからみんなやりたがる。

けど、みんながやりたがる仕事は単価が下がっていくのです。価格競争に巻き込まれていく。




その点、モバイルは地味で、故にやりたい人が少ない。さらに経験と人脈、実績がものを言う。




開発の内容自体はPCサイトより遙かに複雑で高度。MovableTypeやワードプレスみたいなオープンソースのCMSでお手軽に構築できるような代物はひとつもない。全てがオートクチュール。UEIがCMSパッケージではなくCMSソリューションを提供するのもそういう理由で、パッケージを売っておしまい、という商売ではなくて、サイトごとの特徴をきちんと反映できるCMSに変幻自在に変えていかないとニーズを完全に満たすことはできないわけです。






ある意味で、こういう表を公開しただけでブクマが1000もついてしまうというのは、それだけこの業界の人が多いんだろうなと思いました。僕からすると対岸の火事のようですが、似たような仕事だけにモバイル業界に飛び火する可能性もなくはない。




けれども、結局、開発費で相見積もりをとって、とにかく安い方に発注する、というやり方の商売では、結局稼げない。雪国まいたけは高いけど美味しいから売れるわけで。




かのグッチオ・グッチが掲げていたスローガンは




 「価格は忘れるが、品質は生涯残る」




どんなに高くても、逆にどんなに安くても、値段というのは忘れてしまうものです。

会社はWebサイトの制作費なんか、期が変われば完全に忘れてしまう。それが時給1000円のバイトにつくらせたものだろうと、20万円で発注したものだろうと。




けど、自分の担当するWebサイトは毎日のように見るわけで、そのときそれがショボイと、「なんだかなあ」という気分になるわけです。




そのうちそもそも爆安価格で発注したことすら忘れて、「やっぱあの会社じゃダメだ」と結論づけて結局別の会社にまた相見積もりをとることになる。




これじゃあ安売りした方も浮かばれないわけです。




だからうちは値引きはしません。その代わり、予算にあわせて機能を削って頂く。

価格を削ると品質にダイレクトに跳ね返ってしまい、結局お互いが不幸になるのです。




よほど無謀な予算を組まなければ、結局はきちんと作られたものの方が良いに決まっているのです。




そもそも私たちのお客様はリピーターが圧倒的に多い。売上の8割はリピーターです。

だから新規営業担当が居ない。それはそれで問題ですが、それでも会社はてんてこ舞い。

なぜリピーターが多いのかというと、儲かっているからです。私たちの提供するツールを使って、きちんと儲かるところまで持って行く。儲からなかったら、ご相談に乗る。




急拡大してしまったから、会社にいろいろとひずみはあるのですが、そういうことも含めて、品質を高める努力と対応をし続ける。重要なのはまずお客様が儲かること。そのお手伝いをさせていただいて、私たちの仕事を確保すること。これが上手く回る必要があるわけです。




品質は残るわけですからね。


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