アメリカのゲームエグゼクティブに共通する特徴
DICEはDesign Innovate Communicate Entertainの略で、主に全米のゲーム会社の経営幹部が集まるイベントです。GDCやE3と違い、誰でも参加するわけではないので、人数は少ないのですが、人がもの凄く濃い。偉い人ばっかりという感じです。
水口さんのお供として、末席でウロウロしてるだけの僕ですが、会場をふらふら歩いていたり座っていたりするだけで「Oh, Are you Mizuguchi-san?」と聞かれて、「No no」と答えたりしつつ、相手の名札を見るとWorld of WarcraftやDiabloで有名なBlizzardのFounderだったり、さっきみたいに学生時代に狂ったように遊んだAge of EmpireのENSUMBLE STUDIOのヘッドだったりして、かなりカルチャーショックを受けています。
このイベントがなぜゲームエグゼクティブのイベントと呼ばれるのか。
たぶん参加費がわずか三日間なのに2500ドルもするから・・・と思ったのですが、アメリカのイベントでは一人3000ドルなどの参加費はザラ。SIGGRAPHやGDCだとそれくらいです。日本だと一人あたり30万円のイベントに1000人単位で人が来るというのはちょっと考えられないかもしれませんが、こちらだとごく当たり前なのです。
ただ、そうしたイベントでは、キーノートなど重要な人のセッションがひとつだけ聞けるExivision Passは2万円くらいなので、2500ドルのパスしか用意されていないというのがひとつの障壁として機能しているのかもしれません。
で、びっくりするくらい日本人が居ない。
ふと、パーティ会場で
「あ、日本人だ」
と思って話しかけようとしたら、久夛良木さんでした…。もちろん話しかける勇気なんかありません。
というか、それくらい少ないということです。
久夛良木さんは今回、プレイステーションの生みの親としてアワードを受賞していました。
目に生彩が宿っていて、まだまだなにかしてくれそうな気がしました。期待です。
さて、夜はアチーブメントアワードとして、今年(去年)発表されたゲームを総括して表彰するイベントでした。
これがあるからエグゼクティブが集まっているのかもしれません。
アワードでは、Call Of Duty4が賞を総嘗めして優勝していました。
Overall Game of the Yearのノミネート作品は、Call of Duty4, BioShock, Orange Box, Super Mario Galaxyの四作品で、マリオは今回惜しくもひとつも賞を取れませんでした。
アメリカ人は本当にFPS(一人称視点シューティング)が好きだなあという印象です。
小野さん一押しのWorld of Warcraftもネットゲーム部門で受賞し、まあそういうわけで次々と偉い人が出てくるのですが、しばらくゲーム業界を離れていたため、少し新鮮に感じたことがいくつかあるのでメモしておきます。
- スーツを着ていない
- ジョークが得意
- トークが軽妙
- プレゼン資料が美しい
プレゼン資料というのは、どうやら当然のようにCEOなりが自分で作るものらしいのです。
部下が作ったプレゼン資料というのは、やっぱりだめなのだとか。
ということはアメリカの企業でトップに立つには、まずプレゼン資料を美しく作る能力が必要とされているということです。
あまりにも格好よすぎるプレゼンを見ると、「ほんとにこの人が作ってるのか?」と思うことがありますが、スティーブ・ジョブスやゲイツですら自分で作っているのだとか。
水口さんは一緒に飛行機に乗るときに「やべーぜんぜん書いてない」と言って白紙のパワーポイントを開いていましたが、今日のプレゼンは本当に見事でした。たぶん他の出席者と比較しても一番良かったというくらい。
それなりに奇麗なプレゼンをみんな作ってる訳ですが、特に目を引くプレゼンというのはどういうものなのか、共通点を見つけてみました。
- 伝えたいテーマとメッセージがはっきりしている
- 会社オリジナルのテンプレートを使ってる(お仕着せの再利用はしない)
- ベースカラーとキーカラー、アクセントカラー、それぞれのフォントが統一されている
- 標準フォント(MSゴシックなど)を一切使っていない
- 画像がふんだんに使われている
- ムービーが多く使われている。多いときは1ページに最大4つ
- スライドの順番が練り込まれている。起承転結がある
- ジョークを織り交ぜる
水口さんのプレゼンは上記の要素の全てを備えていて、完璧でした。
他にも目を見張るようなプレゼンはだいたい上記の要素を含んでいました。
よくスティーブ・ジョブスはプレゼンが上手いと言われますが、ビル・ゲイツのプレゼンも全く負けてはいません。
僕は2001年のGDCでゲイツが世界で初めてXboxをお披露目するプレゼンを生で見ていましたが、あっという間に会場の心をつかんで、ジョークで笑わせ、Xboxという新しいハードに夢中にさせました。
ゲイツのジョークは時々自虐的で、常に気取っているジョブスとは対極に位置します。
個人的にはゲイツのプレゼンの方がプレゼン自体は上手いと思います。
ただ、残念ながらゲイツの場合、製品自体が人を熱狂させるものでもないのでいまいち印象が薄いのではないかと思います。Xboxのときは異常に盛り上がってましたが。
ゲーム業界は勢いがあってやっぱり実に面白いなあと思いました。久しぶりに。
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